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《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(240作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

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小説短編集 【69】すれ違いのダイアリー(原稿用紙30枚)


※琉生は赤坂一ツ木通りを赤坂見附駅に向かって歩いていた。今から10年前20歳の琉生は、この通りをバンドのメンバーたちと一緒に期待に胸を膨らませて歩いていた。あの日琉生と一緒に歩いていたバンドのメンバーたちの姿は、もう消え去っていた。
 
 今、琉生の頭の中では、夢と言う初め光り輝き後に色あせた正体不明な存在が曖昧な存在となりつつあった。20歳の琉生にとって夢とは実現するはずのものであったが、今30歳になっていた琉生にとっては実に中途半端なものに変わっていた。
 
 夢は叶わぬもので諦めるものであると、最近の琉生は考えるようになっていた。琉生がそう思うのは無理もなかった。大学2年生の時にプロのバンドとしてデビューしていた琉生の音楽生活は、贔屓目に見ても順調とは言い難かった。
 
 10年前赤坂一ツ木通りを歩いていた琉生は、赤坂にある音楽事務所で正式にプロのミュージシャンとして契約を交わして、弾む様な足取りで事務所を出て今日と同じように赤坂見附の地下鉄の駅に向かって歩いていた。少しは街並みの様子は変わっていたのだろうが、それに比べて琉生のミュージシャンとしての置かれている状況は様変わりしていた。
 
 バンドでリードボーカルと楽曲全曲の作詞作曲を担当していた琉生は、自分が創り出す楽曲に何故だか絶対的な自信に満ちていた。そしてそれこそデビューしてから2,3年は、琉生の自信を裏付けるような評価が得られていた。アルバム制作の依頼はコンスタントに入って来ていたし、ライブ活動もスケジュールを空けるのが難しいくらいの状況が続いていた。
 
 勿論音楽業界でも、琉生のバンドに対する評価は高まって行くばかりだった。だがそんな状況が様変わりしたのは、琉生が思うような楽曲づくりが出来なってからだった。当時の琉生には納得できる詩もメロディも創り出すことが出来ない日々が続いていた。そしてそれは周囲の反応から判断しても、自分が周りからの期待を裏切っていたのは間違っていなかった・・・。


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小説短編集 【70】永遠の噓だったなんて(原稿用紙30枚) 

※智樹が小説の動機付けに繋がるダイアリーを書き始めてから、智樹の本棚に何冊のダイアリーが積み上げられただろう。それこそ初めて智樹がダイアリーを綴り始めたのは高校生の時だった。もっともダイアリーと言っても使わなくなったノートに、退屈な授業の合間に悪戯書きを自由気ままに綴り出したのが切っ掛けだった。
 
 今25歳になっていた智樹は、机の隣に置いてある大きな本棚の一番下の棚に、放置されていたダイアリーの束を見つめていた。目の前の大きな机の片隅に放置されていた最新のダイアリーは、ほとんど開かれることがなくなっていた。
 
 大学生の頃から小説の新人賞に応募し始めた智樹は、自身が創作する小説のヒントの全てを高校生の時から書き始めていたダイアリーの中から得て来ていた。流れ過ぎた時間の中で高校生の或いは大学生の智樹が、その時々の様々な風景を前にして悩んだことや考えたことなどから、智樹は小説の一文を紡ぎ出していた。
 
 そして大学に入学してから2年後、小説を書き続けて出来上がった作品を順番に出版社の新人賞に応募していた智樹に、初めて嬉しい結果がもたらさせたのは智樹が20歳の時だった。予選通過なども全くなかった中で、智樹が投稿した小説が初めて、ある出版社主催の新人賞の佳作に選出されたのだった。
 
 智樹のパソコンの投稿済作品のフォルダー中から、新しく受賞作品と名付けたフォルダーの中に移行した初めての作品だった。あの時智樹の傍らには、受賞をともに喜んでくれた同じ大学の同級生の玲奈がいてくれた。智樹も玲奈も20歳の時だった。
 
 今玲奈のことを語るとすれば全て過去形で語るしかないことは、25歳になっていた智樹には自身の未熟さを思い知らされることと同一のことだだった。20歳で出版社の編集者にマンツーマンで小説家として指導を受けていた智樹は、編集者と智樹自身の努力のお陰で新人小説家として周囲から、それなりの評価を得るまでになっていた・・・。


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