オリジナル小説 【ジャニスが語りかけた夜】(第13回) | 《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(243作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

★Kindle 本 小説(amazon)販売中!

恭一の前で目まぐるしく風景が変わって行っていた。退屈で代わり映えのしない日々を送っていたサラリーマン時代に比べると、様変わりしていた。土屋さんのライブハウスで出会ったバンド仲間たちと眺める風景は、恭一にとって新鮮で刺激的な風景ばかりだった。

そこへ大学卒業以来やっとのことで聡美に再会することも出来た。手紙が聡美に届かなかったことにどんな事情があったのかなど、こうして再び聡美に会えるようになっていた恭一にとってはもうどうでもいい事のように思えていた。

今から思えばサラリーマン時代の恭一は間違っていると思った時には、相手が誰であろうとはっきりと自分の意見を口にした。そんな時に一瞬恭一に投げ掛けられる職場内の目線の冷たさを、今でも恭一はしっかりと覚えていた。

誰にだって間違いなどあるに決まっているのに、会社の中ではそうではなかった。間違いではなく考え方の違いや見方の違いと言う言葉で、その場を常に濁された。そこへ行くとたった4人と言う小さな人の集まりだったが、恭一は今のバンド仲間のメンバーたちとはとことん自分の考えをぶつけ合うことが出来ていた。恭一にとってこの違いは想像以上に大きかった。

感情の起伏がこれほどまでに生きていると言う臨場感に結ぶつくものだとは、恭一は考えもしないことだった。最近小さい時からずっと独りきりの世界に拘って生きて来た恭一に、それまでにない感情が芽生えて来ていた。久し振りに再会した土屋さんや聡美、それと新たに出会った今のバンドのメンバーたちを前にすると、自然と恭一の中にそんな人たちに対して自分に何が出来るのだろうかを考えるようになっていた。

普通に会話している時に、知らない間に自分が相手のことを考えている自分に気付くことが多くなっていた。こんな感覚は初めてのことだった。周囲の人たちの姿が見えて来るのと同時に、恭一の中でもそれまでにない感性が芽生えて来ていた。

どちらかと言うと今まで自分の感性の赴くままに生きて来た恭一が、今は取り敢えず今度こそは白黒はっきりする最後まで自分の選んだ道筋を歩んで行こうと考えるようになっていた。そんなどこまでも前向きな自分に出会うことになろうとは、正直恭一はそんな自分自身に驚かされていた。

最後まで自分のやりたい事をやり続けていくことにより見えてくる世界が、一体どんな世界なのかを今の恭一は素直に知りたいと考えていた。最近の恭一は自ら進んで、何かいつもと違う事をしたいと思うことが無くなって来ていた。

そんな事を考えなくても、普段の日常が今の恭一にはとても刺激的だったからだった。今の恭一は独りきりの世界に拘っていた時の恭一とは、随分と変わって来ていた。今の恭一は土屋さん、聡美、バンドのメンバー、みんなの話をしっかりと聞く耳を備えていた。こんな自分に出会うことになろうとも、独りきりの世界に拘っていた恭一は考えられなかった。

とにかく土屋さんのライブハウスに戻って来てから、恭一の歩んで行く道は大きく変化していた。そしてそんな恭一は高校3年生までを過ごした岡崎時代、そしてバンド活動に夢中になっていた大学時代の4年間、更に生命保険会社で過ごした3年間、それぞれの中で思い出したくもない苦い経験を積み重ねて来た。

そんな過去の重荷が今の恭一の頭の中を過る事などなくなっていた。故意にではなかったが結果として恭一は、過去の重荷を全て消し去ることが出来ていた。そんなものを思い出す必要もないくらい、日々の恭一の生活ぶりが充実していた。

そんな今の恭一があるのは、3年勤めた会社を辞める決断をしたあの夜があったからだった。眠れない夜が続いていた恭一は、いつも懐かしいジャニス・ジョプリンの♪コズミック・ブルースを聴いていた。

そもそも恭一がジャニスをよく聴くようになったのは高校時代にジミ・ヘンドリックスのコピーに挑戦していた時に、彼と同じ27歳に亡くなったアーチストたち中にブライアン・ジョーンズやジム・モリソンと一緒にジャニスの名前が並んでいたのが切っ掛けだった。そんなジャニスの楽曲の中でも、特にお気に入りだったのが♪コズミック・ブルースだった。何よりその歌詞の内容が恭一の心根に響いて来ていた。


9300000.jpeg

////////////////////////////////////////////////////////////////////////

※Kindle 本 小説(amazon)販売中!

■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 中編集(原稿用紙90~100枚)1作250円


【1】Tシャツとピンクの万年筆
【2】リバプールの旅人
【3】あなたがネクタイ外したから、私もヒールを脱ぐわ
【4】僕のプレイリストはタイムカプセル
【5】鳴らない風鈴
【6】切り分けられた林檎
【7】キャロルキングを聴きながら
【8】真冬のストローハット
【9】5年目のバレンタインデー
【10】セイントバレンタインデーの奇跡
【12】街角のバレンタインデー
【13】瞳の中のバレンタインデー
【14】バレンタインデー・ラプソディ
【15】ラストチャンス・バレンタインデー
【16】奇跡を呼んだナレーション
【17】コーヒーチケット1冊分の恋
【18】ハッピーエンドまでの君と僕とのセオリー
【19】ブロークンハート・イヴ
【20】グッドミュージックが生まれる街
【21】聖マルタンの夏
【22】ノン・アップデート・メモリーズ
【23】グッドバイ色の街だから
【24】雨の中のオレンジ
【25】君がヒロインになる瞬間(とき)
【26】シャッター音がくれた奇跡
【27】眠れない夜はニルソンを聴きながら
【28】リベンバーミー
【29】フォーマイセルフ&フォーユアセルフ
【30】ジョナサンがいた風景
【31】ファイナル・コンサート
【32】気分はアウトオブデート
【33】それぞれのダイアリー  
【34】あの頃君は駆け抜けて逝った  
【35】ミュージシャンたちの恋物語
【36】サマークリスマス
【37】ジーンズのある風景
【38】ゲバ字の消えた夏
【39】高校3年生のネアンデルタール人
【40】アルバート・ドッグを吹く風
【41】ワーズワースそして教授と私の旅
【42】天窓から眺めるロンドンの街
【43】チェスターの空の下
【44】ウクレレの音が流れる夏
【45】私は夢見るシャンソン人形
【46】いつか観たジョンレノン
【47】あの日聴いた夢のカリフォルニア
【48】懐かしいね、ガントレ!
【49】神楽坂で聴くサウンドオブサイレンス
【50】キャロルキングをお寺で
【51】サウンドトラックはユーミンで
【52】ルート66へに誘われて
【53】俺たちのジュークボックス
【54】キックオフは、これから!
【55】タイムカプセルからビートルズ
【56】2人のランナウェイ
【57】もうラヴソングは唄えない
【58】遅れて来たラヴレター
【59】君にとどけボーントゥーラン
【60】母はクラプトンが大好き
【61】タイムアフタータイムなんて
【62】シャーリーンの唄ですよね
【63】気分はハロー・グッドバイ
【64】クロスロードとオヤジたち
【65】サザンカンフォートを抱えた娘
【66】あなたがトミーで私がジーナ
【67】ロールプレイング・ラヴをあなたと
【68】パンタロンじゃなくベルボトムさ!
【69】俺は根っからのランブリング・マン
【70】タイムタイムタイム~冬の散歩道
【71】俺のロード・ソングは、ウィリン
【72】アメリカ《名前のない馬》から始まった
【73】ツェッペリンに包まれて
【74】ロイ・ブキャナンの流れる家
【75】フォークソングが消えた日
【76】終わらないメロディ
【77】俺もお前もストレンジャー
【78】ジョニ・ミッチェルで聴きたいね
【79】今さら、ハートに火をつけて
【80】アフリカを聴きながら
【81】プロコル・ハルムが唄っている
【82】ゼーガーとエバンズが教えてくれた
【83】ビタースウィート・サンバを取り戻せ
【84】ティアーズ・イン・ヘヴンなんて
【85】俺たちはフール・オン・ザ・ヒル
【86】このリフに魅せられて
【87】さらば黄昏のレンガ路よ
【88】心にハングリー・ハートを
【89】いつもジャーニーが流れていた
【90】ジャニスと踊ろう
【91】俺は今でも25or6to4
【92】君に捧げるララバイ
【93】ジャニスが語りかけた夜
【94】キリング・ミー・ソフトリーをあなたに
【95】恋をするならシェイクスピアで
【96】ゲーテが教えてくれた愛のシーズン
【97】僕と君だけのファーザー・クリスマス
【98】恋する気分は、ヴェルレーヌから
【99】愛を語るならヴェッキオ橋で
【100】ショーシャンクの空が・・・
【101】ビーハイブ・ヘアの女(ひと)
【102】カセットから流れ出たメロディ
【103】オヤジたちのスタンドバイミー
【104】届かない、君へのラブソング
【105】マージー・ビートに魅せられて
【106】父のギターが残してくれたもの
【107】夜のパリ、それはラヴレターの香り
【108】閉ざされたままのギターケース
【109】雨の日には、グラント・グリーンでも
【110】ボースサイドナウが流れる喫茶店で
【111】恋のリフレイン
【112】ベイビーが流れていた季節
【113】フォロー・ミーに誘われて
【114】それでも、あなたにラヴソングを
【115】想い出のコンサート・チケット
【116】スターダストをあなたと
【117】ナローボートで素敵な恋を!
【118】ライトハウスで出逢った、あなたへ
【119】レモンの木の下で
【120】2度目のチャイルドフッドフレンド
【121】ミニシアターより愛を込めて
【122】あの時YESと言えていたなら
【123】ソリチュードに包まれて
【124】窓辺のロミオ&ジュリエット
【125】フラに恋する君に恋した僕
【126】ミルキーウェイで、さよならを
【127】コイントスで決めた恋
【128】二人の恋はメリーゴーランド
【129】スラッキー・ギターに魅せられて
【130】ソー・ファー・アウェイが流れる街
【131】メッセージノートのある喫茶店
【132】恋のワン・ウェイ・チケット
【133】ベルベッド色の恋
【134】神楽坂ラヴ・ストーリー
【135】すれ違いのスウィート・ハート
【136】リッスン・ツー・ザ・レイディオ
【137】夏のレムナント
【138】ダウンタウンボーイ
【139】中央フリーウェイ
【140】AVALON
【141】フォーカス
【142】Midnight Scarecrow
【143】セシルの週末
【144】街角のペシミスト
【145】ジャコビニ彗星の日
【146】ツバメのように
【147】ダイヤモンドダストが消えぬまに
【148】イチゴ白書をもう一度
【149】ベルベッドイースター


149999999.jpeg

■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 長編集(原稿用紙300枚~450枚)1作500円

【1】校内放送でビートルズ
【2】府立第14中~青春グラフィティ!
【3】そうだドルフィンへ行こう
【4】夜のグラフィティ
【5】もう一度聴いてみようかホテルカリフォルニア 
【6】今何故、500マイルも離れて
【7】坊っちゃん、フォーエバー
【8】ブローイングインザウィンドでも聴いてごらん
【9】木登り~タイムワープ


999999999999.jpeg

■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 短編集(原稿用紙~50枚)1作100円

【1】夜空と波間の彼方に
【2】深大寺ラヴストーリー 
【3】ダブルレインボーの彼方に
【4】真冬のウインド・チャイム 
【5】ギターケースの中のラヴレター 
【6】横浜ロックンローラー 
【7】遅れて来たフラワーチルドレン 
【8】阿波人形浄瑠璃ラブソディ
【9】真っ赤なマニュキアの指先を見つめた夏
【10】君がいた街角
【11】聴かせてよ、あのリフを!
【12】ワイパーの向こうで消えた女性(ひと)
【13】さよなら、ミュージシャン
【14】ボーカルインストラクターの夢追い人
【15】写譜屋の恋物語
【16】スポットライト・グラフィティ
【17】リペアマン・ブルース
【18】歌えないラヴソング
【19】夢捨て人のハーモニー
【20】君の名前が消えたエンドロール
【21】ユア・シックスティーン
【22】ピアノのある喫茶店
【23】旅人からのリクエスト
【24】君への恋心をアップデート
【25】トラックドライバーの独り言
【26】サリンジャーを手にした君へ
【27】ハイタッチなんて似合わない
【28】君の知らないイエスタデイ
【29】君へ送るハートビート
【30】エルトンからの贈物
【31】君に聴かせたいメロディ
【32】31文字のラヴレター
【33】48時間のランナウェイ
【34】君が遺した風景だから
【35】恋のロングバケーション
【36】私の彼はトラベラー
【37】ミュージシャンからの恋文
【38】さよならグッドメモリー
【39】恋のスターティンググリッド
【40】横浜バイザシー
【41】冷たい雨が好きだから
【42】街角ピアノ物語
【43】キネマのある街
【44】本日限りが好きだから
【45】この曲にはフルートが必要だから
【46】テイク・ミー・アロング
【47】3年越しのデスティニー
【48】あの日の君の肖像画
【49】奇跡のハーモニー
【50】ポートレイトの君は誰なの?
【51】雪降る街でサヨナラを
【52】永遠のチャイルドフッド・フレンド
【53】ミルキーウェイって何色?
【54】フラガールのいた夏
【55】消えないグラフィティ
【56】ドルフィンに連れてって
【57】校内放送なんて聴かないよ
【58】ジュークボックスのある風景
【59】君と僕とのタイムカプセル


590000000.jpeg