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《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(247作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

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小説短編集【56】ドルフィンに連れてって(原稿用紙30枚)


※咲奈が中学時代の友人である朋美の家に立ち寄るのは6年ぶりのことだった。地下鉄神楽坂駅を降りて牛込中央通りから一本裏通りにある神楽坂能楽堂沿いの道を、周囲の街の様子を伺いながら咲奈はゆっくりと歩いていた。たった6年或いはもう6年か分からないが、街の様子は少しだけ変わっていた。
 
 緩い上り坂を上がった先にあった古いアパートは眩しいほどの新しいマンションに変わっていた。この坂を何度も行き来したのは、咲奈が中学1年生から3年生までの3年間だった。当時千代田区にあるお嬢様学校として有名だった中学校で咲奈は朋美と出逢った。
 
 咲奈は中学の時から入学してきていたが、その学校では幼稚園から進級してきていた生徒たちが圧倒的に多かった。そんな中で欠員補充のための中学受験で入学した咲奈は、最初から何となく馴染めない時間ばかりが続いていた。
 
 そんな中でたまたま席が隣同士になった朋美だけが、何の抵抗もなく咲奈に接してくれたのだった。もっとも当初朋美も咲奈には関わりたくないと思っていたかも知れなかったが、少なくとも当時の咲奈にとって朋美は唯一心を許せることができる存在であったことは間違いなかった。
 
 それだけでなく咲奈と朋美とは音楽が大好きという共通項があった。しかも好きなアーチストまで一緒だった。2人が好きだったのは《あいみょん》だった。2人は《あいみょん》が紡ぎ出している歌詞が大好きで、勿論つい口ずさみたくなるメロディも大好きだった。
 
 2人は《あいみょん》がアコギを持って歌っている姿に憧れて、2人でギターを手に入れてコピーをしたいと考えるようになった。ギターなど手にしたこともない2人が頼りにしたのが、朋美のお兄さんの一樹だった。朋美より6歳年上の一樹は、当時大学生でしかもシンガーソングライターとして活躍していたのだった・・・。


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小説短編集【57】校内放送なんて聴かないよ(原稿用紙30枚)


※高校へ入学してから2年間、雄星は1年365日サッカーばかりをしていた。正直2年間で公式戦に出ることが出来たのは新人戦だけだった。そんな雄星が2年生の終わりに、ヘディングでジャンプして着地するたびに右膝に激痛が走るようになっていた。
 
 春休みの間に病院へ行った雄星は、医者から当分の間は膝に負担のかかるような激しい運動は避けるようにと指示された。それを守らないと日常生活まで痛みで支障がでるとまで言われた。最後に当分の間って最低どのくらいかとの雄星の問いに、医者は最低1年間とあっさりと答えた。
 
 サッカーが出来なくなった雄星は、3年生になる直前にサッカー部を退部した。元々レギュラーでもなかった雄星だし大学への推薦入学が決まっている3年生以外は3年生になると同時に大学受験勉強に専念するために
部活からは距離を置いていたので、雄星の退部は何ら目立つこともなかった。
 
 いずれにしてもサッカーができないのにサッカー部に留まるのが何か不自然なように思えた雄星は、あっさりと退部したのだった。そんな雄星は、高校3年生の1年間を大学受験のためだけで過ごすのが何となく物足りたく感じていた。
 
 サッカー以外に音楽を聴くのが大好きだった雄星は、学校内でも授業中以外の時間のほとんどをスマホを利用して大好きな音楽を聴いていた。そんな雄星は高校入学からずっとコロナ禍ということもあって、昼食時はクラスメイトたちと一緒になって黙食していた。
 
 そんな昼休みに教室内に流れてくる校内放送の音楽が、雄星には気になって仕方なかった。勿論ほとんどの生徒たちは、耳にイヤホンをしてスマホで好きな音楽を聴いていたから関係ないと言えば言えた。それでも音楽以外にラジオ放送を聴くのも好きだった雄星には、気になっていたのだ・・・。


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