違うものを見てる(?)――― 永遠の0――― | あづまの書斎

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基本的には私が読んで面白かった本のご紹介です。
時々、時事や身の回りの出来事なんかもお話させていただきます。

永遠の0 (講談社文庫)/講談社
¥920
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司法浪人、と言えば聞こえは良いものの、結果が出ない事に腐り、ついに今年は試験すら受けなかった健太郎は、姉に強引に誘われる形で、血はつながっているが、記憶どころか写真の一枚も残っていない実の祖父、宮部久蔵についての調査を始める。
旧帝国海軍の航空兵として、天才的な空戦の技術を持つ一方で、妻子のために絶対に生き残る、と憚りなく口にすることから臆病者との誹りも受けていた彼が、何故、終戦直前に特攻により戦死したのか。
太平洋の各所で彼と同じ部隊に配属され、生き残る事ができた元航空兵たちの証言によって祖父の姿を追い求める健太郎を、驚きの事実が待っていた。


本書のほか、『ボックス』、『海賊とよばれた男』 などの話題作がある著者ですが、関西人である私にとっては、 放送作家として 『探偵!ナイトスクープ 』 のチーフライターを長年にわたり務めていらっしゃったというご経歴がツボですw。が、その放送作家時代に培われたと思われる構成力は見事で、文庫版で550ページ超とボリュームのある一作ですが、散漫な箇所はなく、途中で飽きることはまずないでしょう。

誰を主人公と考えるか、というと事については意見が分かれるかもしれませんが、調査の対象である宮部久蔵を主人公と考えた場合は、第三者の一人称により主人公の人となり、言動を描いていくという体裁が採られていることになり、非常に興味深かったです。



本作のメインは、やっぱり宮部久蔵と零戦という事になるんでしょうけど、私は終始、その背景として描写されていたものに目が行っていた。
みんなと同じものが見えていたのかは疑問だけど、まあ、それは、過去に 『魔性の歴史』 や 『失敗の本質』 を読んでいたこともあって、これといった目新しさは感じなかったものの、そういったものに自然と目が向くようになっていたからなんでしょうな。

魔性の歴史―マクロ経営学からみた太平洋戦争 (光人社NF文庫)/光人社
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失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)/中央公論社
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いずれも、政治的な信条を極力排して、太平洋戦争 (失敗の本質のほうには、ノモンハン事件も含まれています) を学術的な観点から分析したもの。
『永遠の0』 の中に私が見ていたものがなんだったのかを知りになりたいという酔狂な方は、ご一読ください。ただし、いずれも内容はそれなりに難しいです。