鉱山都市の入り口で待っていてくれたパティに跨り、苦労して上って来た山道を一気に下る。
大峰鉱山に足を運ぶことは暫くないだろうが、この先此処が何か変化して行くのか、それともこのまま完全に消えて無くなってしまうのか、その行く末は追って行きたい。
だいぶ日は傾いて来ているが、明るいうちに街に帰り着けるだろうか。
砂利道はあっという間に終わり、往路最後の集落だった馬木の内の家々が見えて来た。
舗装道を下るのは本当に一瞬だ。一歩一歩の速さで出会って来た景色は山の彼方へ消えて行き、やがて地上の人々の暮らしが見えて来る。
上郷駅から釜石街道へ下り、長いバイパスを遠野目指して走る。遥か彼方に雪を被り始めた早池峰が見えた。やはり早池峰は遠野の山々の中でも、別格に大きい。そしてその早池峰を隠すように、手前に薬師の姿がある。
青笹の田園地帯を左手に、鉄路と並走。
バイパスから裏道(本来はこちらが釜石街道)を走っていると、電線に一羽の鳥が止まっているのが見えた。もうすぐ日が沈むぞ、街まではまだ少しあるぞ、と俺を急かしているようだ。
初音橋を渡り鶯崎に入ると、ようやく遠野の中心街が目の前に近付いて来る。遮るものの無い橋の上からは、再び早池峰の姿を拝んだ。
鶯崎の左手の山の向こうには、欠ノ上稲荷や日枝神社があり、懐かしい空気が流れて来るようである。此処まで来るとやっと、遠野に戻って来たような気がする。
今回は上郷からの出発だったので、2日目の夕方になってようやく遠野駅前に落ち着くことが出来る。