遠野放浪記 2015.12.26.-14 雪に埋もれた太陽 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

そうこうしているうちに雪はどんどん強くなる。数十分ですっかり街は雪に埋もれ、我々もじっと立っていればすぐに雪の塊と同化してしまうだろう。

 

 

吹雪に逆らい、何とか宮守駅に辿り着いた。

 

 

 

すぐに釜石行きの汽車が来る筈の時間だったが、其処は風が吹けば止まってしまう釜石線……案の定一時間近く遅れていた。

遠野まで向かえるだけ有り難いと思い、待合室で茶でも飲みながらゆっくり待つことにした。

 

 

 

 

 

 

その間、客は誰も宮守駅に来なかった。

雪が降ると、周囲の音を吸い取ってしまうかの如く、本当に静かになる。人の足音も声もせず、闇に駅の灯りだけが浮かぶ無音の夜に、永遠に此処に居ても良いのではないかと思えてしまう。しかしそんな沈黙の夜を引き裂くように、遅れていた汽車がけたたましい汽笛の音を響かせ、漸く宮守駅に到着した。

 

 

先程まで「永遠に此処に居ても良い」等と言っていたのに、汽車が走り出すと安心してしまうものだ。暖かい車内で席に座り、雪に埋まって行く宮守の街を眺めながら旅を続ける。

 

 

やっと遠野駅に辿り着いたところ、雪の勢いは留まるところを知らず、ひと晩かけて街を飲み込まんばかりの様相を呈していた。

 

 

本来であればもっと早くに到着し、宿に荷物を置いてから食事に繰り出す予定だったが、こんな天候ではどうしようもないので、宿に連絡して先に食事を済ませることにした。