雪はどんどん強くなる。道の駅の建物ももう霞んでしまい、看板や街灯の光だけが吹雪の中に浮かんでいる。
めがね橋に一度別れを告げ、丘の上の目抜き通りへ。
こちらにももうたっぷりと雪が積もっている。真新しい積雪の上に、車の轍や人の足跡が残されているが、その上にもさらに新しい雪が積もり始めている。この足跡も夜半には消えるだろう。
我々はもう一度線路の脇を抜け、めがね橋をフラットに眺めることが出来る崖の上へ。此処も当然、急速に積もる雪に埋もれようとしている。
めがね橋を照らすライトが雪にまで反射し、中空に青や橙、緑の光の筋が出来ている。吹雪と夜の闇に閉ざされた空に、一瞬だけ鮮やかな虹が架ったようだ。
やがてこの吹雪さえも切り裂くように、強烈な光が差し、そして我々を現実に引き戻す存在がすぐ目の前を駆け抜けて行った。
闇に浮かぶ光に絆される我々を覚醒させる鉄の車輪の音で、我々も帰らなければならない時間が近付いたことに気付く。