日が陰り空気はだいぶ冷え込んで来た。遠野の冬の夜は早い。校庭で何時までも油を売らず足早に街に下りる。
正しい通学路(?)を下ると、幾分か街の中心近くに出る。
一度道の駅に戻るか、宮守駅で寒さを凌ぐかで迷うところだが、日が暮れる前にもう一ヶ所だけ行っておきたい場所があるので、一先ず踏切を目指すことにする。
そして踏切は渡らずに、山神様に挨拶してから線路沿いの小道へ。
人家の脇を抜けると、めがね橋から釜石街道を見下ろす景色に行き当たる。
この場所は意外に知られていないのか、たまに訪れているが他の人間に出くわしたことは一度もない。
宮守もめがね橋も好きだが、取り分けこの場所は本当に来たいときにだけ来る取って置きの場所だ。誰も居ない冬の風の中で、現実とそれを見下ろす非現実の境に少しだけ足を掛けた様な気分だ。
しかしこうしている間にもどんどん冷えて来ているので、足早に街道に下りて道の駅へ。まさにオアシスのような存在。
ひと息吐いた我々は、道の駅に来るとだいたい食べているわさびソフトを発注。どれだけ外が寒くても、これだけは止められない。
今日は暖かいチャイをポットに詰めて持参しているので、どれだけ冷たいものを食べても心配要らない。
子供と女子高生は冬でもアイスクリームを食べるという言説は俺が子供の頃からあるが、時代は進み今では誰でも冬でもアイスクリームを食べている気がする。当然俺も食べる。
暖かい建物に入り、冷たいアイスクリームを食べながら、冷えて来たら暖かい飲み物を飲むという行為がとても大好きだ。恐らく、読者諸氏の大部分もそうだろう。