遠野放浪記 2014.11.02.-03 人の暮らしの果て | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

カボチャの家を出て先へ進むと、また暫く何もない峠道が続いた。美しく色付いた木々を見る人は、俺以外にいない。

 

 

段々険しくなる坂の途中にまた建物が現れたが、この場所にあるのはこの1軒のみだ。

 

 

家の裏には林道が延びている。山で仕事をする人の住まいだろうか。

 

 

その先にも、集落ではなくぽつんぽつんと人が住む家が現れる。街というには間隔が開き過ぎている。隣の家族同士ではどのような交流があるのだろうか?

 

 

 

夜になれば家のすぐ外に人ならざるモノが歩き回り、近くには誰もいない静寂の時間が流れる。この場所での暮らしがどのようなものなのか、俺には想像が付かない。

 

 

 

燃えるような木々の間を、人とすれ違うのも難しい細い道が曲がりくねりながら走っている。道の両側に、また建物が見えて来た。

 

 

もう随分と前から坂道は上るばかりで、傾斜もかなり大きくなって来た。山道の途中に家があるようなものである。

 

 

 

そしてその次に見える建物が、この道沿いにある最後の家のようだ。

 

 

霧に隠されていた山が、気付けばもう目の前に迫っている。その全面が紅く色付いて大変美しいが、人知を全く寄せ付けようとせず、幽谷に迷い込んだ人間を見下ろす姿には、背中がひやりとする感覚もある。

 

 

この道最後の建物の前には、花や木が丁寧に手入れされた生け垣がある。山に一番近い場所だから、人も何かを表現したいのだろうか。

 

 

その先には、もう道はなかった。神子を目指す旅は此処で唐突に終わった。

 

 

林道は未だ続いているが、山で仕事をする人以外が踏み入ることは滅多にいないのだろう。

 

 

これ以上先へ進むのは止めておこう。帰って来られなくなりそうだ。