遠野放浪記 2014.11.02.-02 過ぎたギフト | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

十文字から神子方面の道に入ると、暫くはアップダウンがある寂しい峠道が続く。

 

 

道の両側には山の木々が迫っているが、その多くが美しい黄色や、燃え上がるような赤色に染まっている。

 

 

長い坂道を下ると、行く先に数軒の家が見えて来た。

 

 

此処が神子の集落だろうか。

建物は僅かに4棟しかなく、そのうち3棟は倉庫やプレハブ小屋のようなので、今この場所に暮らしているのは1世帯だけということだろうか。夜は深い闇に覆われそうだ。

 

 

 

立ち止まってあたりを見渡していたら、この家の方だろうか、ひとりのお姉さまが出て来て話し掛けてくれた。

彼女が「凄いものがある」と言って指さした先には、巨大なカボチャが転がっていた。普通は此処まで巨大にはならないそうだが、このカボチャは何故か放っているうちに数十キロの重さにまで成長してしまったらしい。

 

 

これをどうするのかと尋ねると、彼女は「今月中に男手が確保出来なければ収穫は諦める」と言い、家に戻って行った。人里から離れた場所でこのようなストーリーが紡がれていようとは、今この瞬間にこの場所を訪れた幸運に感謝する。

 

 

道と家は小さな水路で隔てられているが、水路に流れる水は山の奥から流れ込んでいる。水源を辿ると何があるのか、人間には想像出来ない世界だろう。

 

 

道は未だ山に向かって延びている。この先にもまだ何かがあるのだろうか。取り敢えず道が無くなるまでは先へ進んでみよう。