遠野放浪記 2014.09.14.-24 星の夜 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

夜はどうしようかと考えたが、とぴあの開店は9時30分なので、街で朝を迎えても暫くやることが無い。ということで、明日の早朝にも出来るだけ遠野を楽しむため、再び汽車に乗って別の駅を目指すことにした。

晩ごはんは駅の待合で、持参した缶詰の残りを平らげることにした。当時流行っていた和食のおかず缶詰を幾つか持って来たのだが、さといもそぼろ餡肉じゃがが残っていた。たまにはこんな孤独な晩ごはんも良い。

 

 

そして俺は最後の汽車に乗り、隣の綾織駅に降りた。一緒に降りる人は……誰もいない。

 

 

まだ釜石方面へ向かう汽車が2本残っているが、もうこの駅に誰かが訪れることは無いだろう。

 

 

駅は一応、綾織集落の外れにあるのだが、周囲は完全に闇に包まれ、家の明かりすら殆ど見えない。

 

 

遠野方面を見れば、辛うじて道路を行き交う車の明かりが見える。街と街の間の闇を手探りで進む、寂しい明かりだ。

 

 

綾織駅の入り口は大きな道には面していないため、駅から外に出てもそのまま暗闇の中に飛び込んで行くのみである。しかも入り口側には家も殆ど無く、道は数メートル先までしか見通すことが出来ない。俺も正直こんなに真っ暗だとは思っていなかった。

 

 

今日はこれ以上やることも無いため、待合室で下りの汽車を見送ってから寝ることにした。

そういえば、いつも駅前に置かれている自転車が今日は無い。

 

 

小さな待合室のベンチに寝袋を敷き、明日の始発までの間、休ませていただくことにした。

山から海へ、そしてまた山へと歩き回った長い一日が終わり、心地良い疲労を感じる。綾織の夜の静寂に包まれ、この疲れも明日には消えて無くなることだろう。