遠野放浪記 2014.09.14.-23 朱鷺色の思い出 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

街とバイパスを繋ぐ道と交差し、そして街の人々が行き交う木造の橋と交差すると、汽車は遠野駅に到着する。

 

 

 

山間の誰も来ない駅から始まり、とても長い一日であった気がしたが、まだ日があるうちに遠野に戻って来ることが出来た。

 

 

この時間帯は、汽車に乗る人は少なく待合室は閑散としている。

 

 

 

まだ僅かに夏の暑さが残る遠野盆地にも、夕暮れどきになると秋の風が冷たい空気を運んで来る。少し前までは、遠野まつりの季節になると一気に冷え込みを感じたものだが、こんなところにも気候変動の影響が出ているということだろうか。

 

 

遠くの山にカラスが鳴き、子供たちが家へ帰って行く。もうじき遠野は人ならざるモノが出歩く時間帯になる。

 

 

 

この後どうするかは特に何も考えていなかったのだが、暇潰しにとぴあに足を運んでみることにした。この時期にしては大きな雲が山に掛かり、夕日に照らされてパステルカラーに染まっている。

 

 

とぴあには昨日胡桃ちゃんのケーキを頼んだ佐々久という菓子店が入居しているが、その他にも中村屋という和洋菓子店も入居しており、互いにライバルとして切磋琢磨している。

今日はこちらの中村屋でも買いものしてみようと思い、バラ売りの菓子を幾つか買ってみた。

 

 

駅に戻り、ベンチでおやつタイム。

今回手にしたのは、カッパのイラストがあしらわれた三角形のまんじゅうと、遠野むかしばなしという銘菓だ。

銘菓という割に遠野むかしばなしのことは知らなかったし、調べても情報があまりないが、中身はムースみたいな感じで美味かった。

 

 

銘菓のパッケージに描かれているのは、1996年に亡くなった昔語りの名手・鈴木サツさんのイラスト。彼女が75歳のときに一年掛けて語った昔話・全188話は、一冊の本に纏められて遠野のみならず全国で愛読されている。俺が遠野のことを知る以前に活躍していた人だが、彼女のおかげで俺が今、遠野の色々な場所をめぐり、色々な伝説を体験する環境が整えられていると言えるのかもしれない。