遠野放浪記 2014.08.22.-12 名無し峠 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

中滝集落の入り口に、人目を忍ぶようにして幾つかの石碑が立っていた。

一番大きいものは山神塔の石碑だ。


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他にも馬頭供養塔、三峯山、庚申塔、そして長い年月の果てに苔に埋もれてしまった石碑。

馬頭観音はよく見るが、馬頭供養塔とは珍しい。

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集落の境の、塞ノ神としての役割も期待されているのだろう。人々の祈りを集め、今も川の対岸から静かに集落を見守っている。

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さて、今度こそ中滝集落に別れを告げ、附馬牛に向けて出発だ。

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峠道は正真正銘、人の生活の気配がしない山道だ。

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最初は上り坂がキツイが、すぐに下りに転じる。その先は街まで一気に下るだけ。

風が幾分か暑さを和らげてくれる。

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附馬牛の街外れにも、石碑群が残っている。こちらは大小様々なものがある。

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こちらも一番大きいのは山神の石碑。

薬師や早池峰が近いというだけでなく、俺が通って来た道のように生活のすぐ近くに山があるのが附馬牛の日常だと言えよう。外の人間が想像する以上に、山は附馬牛の人にとって極めて身近な存在だ。

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森の木陰に小さな御社や、何故か少しおざなりに置かれた金毘羅様の石碑がある。

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すぐ横の道には夏の日差しがギラギラと照り付けているのに、この一角だけは森の木々に覆われ、昼間でも薄暗い程だ。木漏れ日が風に揺らめき、其処に森の精がいて時折語り掛けてくるように感じる。

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トトロでも出て来そうな情景である。

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集落と集落を結ぶ峠道の両端に、同じように石碑が祀られた森があった。遠野においては決して珍しくない光景だが、同時に遠野の人が山に抱いて来た畏怖の念を知るには充分な光景であると言えるだろう。