遠野放浪記 2014.08.22.-11 続・中滝探訪 | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

集落の東側の道には、建物は殆ど無くただ草原が広がっているのみだった。


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夏の田園に電信柱、深い山に白い雲。遠くにはこの地にひっそりと暮らす家の屋根が見えている。

日本の夏に理想の形があるとしたら、恐らくこれが最も理想に近い姿のひとつであろう。

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やがて道は行き止まりになってしまう。此処から先は、何処にも行けない。

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時折、この季節にしては涼しい風が谷間の集落を吹き抜けて行く。

時間が止まって、ずっと此処に居られたら良いのにな、と思った。

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現代の日本人が忘れてしまった、昔は何処にでもあったであろう夏の景色が、この場所には変わらずにある。

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ゆっくり歩いて集落の交差点まで戻る。

先程は気が付かなかったが、集落で一番大きな家には盆の幟が掲げられていた。

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中滝で生まれ、中滝で一生を終える人もいるだろう。そうやって日本の物語は生まれては消え、また生まれて来る。

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交差点まで戻って来た。永遠にも感じられる長い散歩だったが、時間にすればあっという間だ。

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折角出会えた中滝を、そろそろ出発しなければならない。

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結局、散策中に人と出会うことは無かった。もしかしたら、家の中から俺が訪れたことには気付いていたのかもしれないが。

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もし次に中滝を訪れる機会があったら、その時にはどんな姿を見せてくれるだろうか。今日と変わらない夏を過ごしているのだろうか、それとも……。

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猿ヶ石川を渡り集落を出ると、何だかもう会えないような気がして胸が熱くなった。

でも、後ろを振り返ってばかりいるわけにはいかない。時間の流れは待ってくれない。先へ進むのみなのだ。