遠野放浪記 2014.08.21.-09 夜の早池峰神社 | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

今晩は早池峰神社で一宿をお借りすることにした。

大出の人も宮司さんも、この時間帯に境内に出歩くことは恐らくないだろう。


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一の鳥居をくぐり、山門にパティを置いて境内を歩いてみる。

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本殿へ続く長い杉並木は、暗闇そのものだ。吸い込まれそうな程深い黒の向こうに、今は何も見えて来ない。

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表参道と交差する小道には、若干の街灯がある。宮司さんが境内で暮らしているので、彼女の生活のための明かりであろう。

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明るい方へと歩いて行くと、やがて黒門に辿り着く。

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この姿もまた闇に包まれ、不気味な程の沈黙を以て俺の前に佇んでいる。

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黒門の向こうは、人ならざるモノの領域。支配する闇も一段と濃い。

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くぐり拝殿から奥に、明かりらしい明かりは無い。俺も手探りで、慎重に歩みを進める。

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遠くに、先程見た明かりが微かに揺らめいている。しかし、頼り無さ気だ。

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拝殿の内側は、雨風が凌げ寝心地も良さそうだ。しかし、パティを此処まで連れて来るのが大変そうだ。

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拝殿を抜けると、いよいよ早池峰神社の本殿である。

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最奥の石段を上り、一番神聖な領域に鎮座する。遠野の他の神社とは一線を画する、暗黒の夜に浮かぶ巨大な御姿。千二百年の年を経た大巨人に、その眼で見下ろされた気分だ。

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昼間は賽銭箱の前に御神籤などが置かれ、爽やかな日差しを浴びて参拝客で賑わう本殿も、夜になると静寂に包まれ、空気の流れすらこの場所では止まってしまったようだ。

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思い入れがある場所で夜を迎えるというのは、普段と違う表情を見られるようで楽しい。しかし流石に、この本殿の軒下を借りて眠るのは畏れ多い気がした。