緑の絨毯、花畑、荒涼とした大地。厚い雲、青空、太陽。
荒川高原で出会った全ての風景に俺は感銘を受けたが、しかしその風景の中に、一番会いたかった馬だけがいなかった。
次に訪れるときには、地平線を埋め尽くさんばかりの馬たちに会いたい。光に満ちた晴天下であろうと、雨が降ろうと雪が降ろうと、馬たちに迎えられる光景は幸せに満ちているだろう。
美しい高原の道が、やがて夜の闇に包まれる光景を想像すると、胸がざわざわする。
俺はパティに跨り、元来た道を引き返し始めた。
高原内の道はアップダウンの繰り返しだが、緩やかに確実に街へ向かって下って行く。
天国の中へ延びる、天上の楽園と地上を繋ぐたった一本の道である。
数時間掛けて歩いて来た風景が、あっという間に後方に流れて消えて行く。
管理棟らしき建物に数台の車が集まって来ていた。しかし今回の旅で、馬どころか人ともすれ違うことは無かった。
これからまた長い道程を下って街へ帰る。だがその前に、一ヶ所是非足を運んでみたかった場所が、帰り道の途中にあるのだ。