遠野放浪記 2014.08.20.-08 傍観 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

足元はとても明るいのに、空には再び分厚い雲が掛かって来た。何だかおかしな天気であるが、山の上の空模様はとても移ろい易いと思えば、これもよくあることなのかもしれない。


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もうどれくらい奥まで来たのかもわからない。でも、この上り坂の一番上までは行ってみよう。

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こんなにも人里から離れて、遠野の果てともいえる場所まで来たのに、やはり馬は影も形も見えない。本当に今はいないのかもしれない。

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もう、振り返っても元居た場所の痕跡すら見つけ出せない。

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牧草すら生えない荒涼とした高原の一角に、久し振りに背の高い人工物が見えて来た。馬のための施設だろうか。

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近付いて見ると、その一角は角馬場のように杭で囲われ、ちょっとした盛り土もされている。

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しかし柵らしい柵は無く、謎の高い木の櫓も何に使われるのかもわからないまま、朽ちかけているように見える。

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こんなところまで来ても全く馬に会えないのだから、もう今日は望みが無いということだろう。残念だが、そろそろ日が傾き始める時間帯だし、引き返すことを考えた方が良さそうだ。

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帰りはほぼ下るだけなので、附馬牛の街まであっという間に戻れるだろう。

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遠野においても馬の放牧のメッカである荒川高原まで来て、一頭の馬にも会えなかったのは正直なところショックだった。非常に残念である。

しかし、自らの足でこの非日常的な場所に足を運び、たった独りで空と風を独占できたこの時間帯もまた、俺の遠野における思い出のひとつに書き加えられたことは間違いないのである。