丘の下りに入ってからも、それ程大きく風景が変わるわけではない。
相変わらず突き抜けるような青い空の下に、田園と山々が折り重なっている景色が続いている。
家々はやはり現れては消えて行くが、このあたりは集落の規模がそこそこ大きく、歩いていて多少の安心感がある。
確実に鱒沢へ近付いているようだし、何時まで歩けば良いのかといった先の見えない不安は少なくともこの場所にはない。
地域としては、このあたりも迷岡に含まれるようだ。俺は未だ迷いから抜け出せていなかったということか。
小さな集落の中に、気が付くと歴史の生き証人たちがもの言わず立っている。
彼等と会話が出来れば、かつて迷岡で何があったのかを知ることも容易なのだろうが。
再び道が上り始めた。いよいよ迷いの丘を抜け、次の土地へ移り行くのだろうか。
家の数も減り、今度こそこのあたりが迷岡の外れのようである。