迷岡地区の外れに、ひと際目立つ朱塗りの鳥居が立っている。
此処は迷岡駒形神社。迷岡を訪れる人にとって、重要な目印になる場所だ。
本殿は大きくないが、今でも秋になると例祭が盛大に開催されている。昭和の初め頃、鹿込地区から伝授され成立した迷岡神楽が奉納されるという。
本殿には草鞋が奉納されていた。神楽で使われていたものだろうか?
本殿から道を眺めると、この場所が本当に迷岡の外れも外れであることがひと目でわかる。この先は直ぐに峠道に差し掛かり、暫くは人里も何もないだろう。
この場所でひと息ついて行くことにする。午後になり、気温は益々上って来た……。
休憩がてら境内を散策していると、その片隅にこんもりとした丘があるのを発見した。自然にあるものではなく、人の手で造られたもののようだ。
石碑も幾つも立てられており、これが相当重要なものであることがわかる。
周囲を探してみると、この丘についての解説を見付けた。
これは迷岡の一里塚で、今歩いている道は遠野市街地の宇迦神社を起点とする旧花巻街道であることも教えてくれている。
街道を挟んで反対側にも塚が残っており、一対の塚がほぼ完全な形で残っているのは非常に貴重なのだとか。かつてはこの塚こそが旅人たちを導く道標であった筈だ。
いつかチャンスがあれば、この神社の例祭にも足を運んでみたい。時代を経て形は変われど、この不思議な土地で受け継がれて来た文化に出会えるまたとない機会だ。
此処からは、鱒沢までノンストップで峠越えだ。今度こそ、迷岡にさようなら。