遠野放浪記 2014.07.26.-09 混沌の旅路 | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

迷岡のメインストリートと並行し、山側にももう一本の道が横たわっている。


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先程にも増して、緑と青に包まれた景色が其処にはある。視界を遮るもののない、突き抜けるような一本道だ。

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遥かな山の中腹にも、集落らしき人工物の影が見える。迷岡と同じような、静かな生活を送る人たちがあそこにいるのだろうか。

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山側の道は少しずつ低い場所へ向かっている。目抜き通り側の田畑は次第に高低差によって上へ、上へと移って行った。

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名も無き川に架けられた橋、農業用水の水道管、上の道へ戻る坂。全てが夏の日差しに照らされ、夢か幻のように揺らいでいた。

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橋を渡った先は、深淵へと続く道だった。

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きっとこの道を辿っても、何処へも辿り着くことは無く、やがて消えてしまうのだろう。


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かつてはこの道も、人で賑わったのかもしれない。今となっては、その痕跡も僅かに姿を留めるのみだが……。

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緑と青、ときどき白。夏の色に絆されて、加速度的に頭の中が霞に覆われて行く。これが迷岡という土地が持つ、一種人を惹き付けて離さない魔力の為せるものなのだろうか。

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上の道の集落から田畑を隔て、まるで違う世界を歩いているような気分になる。ところどころに、俺を森の深いところへ飲み込もうと、川を渡る道が何食わぬ顔で口を開けて待っている。

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これは現実なのだろうか。いや、夢だろうか。

上の道こそが現実なのか、それともあの奥深いところの闇が現実なのか。

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暴力的にすら見える夏の色と光に導かれ、混沌とした俺の旅路はまだ続く。