14時過ぎに仙台に辿り着いた俺は、短い待ち時間のうちに昼ごはんを済ませた。
今は無きコンコースの蕎麦屋で、カレー南蛮とミニカレーをいただく。驚くべきことに、この店は一介の駅蕎麦屋にして、蕎麦用のカレーとごはん用のカレーを別々に用意していたのだ(蕎麦用はやや辛口で、ごはん用は甘口)。
カレーに対する拘りを持つ店は、そのジャンルが何であっても称えられて然るべきだ。
太陽は少しずつ傾き始め、ホームで次の列車を待つ俺は眠気を募らせる。
そんな折、何となく足元の線路を見詰めていると異常なまでに注意を促す何かのスイッチが目に入った。踏むと仙台駅が変形して飛んで行ったりでもするのだろうか?
仙台から福島、郡山と列車を乗り継ぎ、旅は刻一刻と終わりに向けて進んでいる。
日本は今や日没の時間を迎え、北東北よりもひと足早く形成されつつある田園の水鏡に、いっぱいの光と橙色が流し込まれて行く。
俺が知らない街で、これからどのような夜が繰り広げられるのだろう。
空は橙色から紫、そして藍色に移り変わって行く。目に見える景色は次第に光と影に二極化される。
やがて来る闇に追い着かれまいと、汽車は悲し気な響きでレールを揺らして走って行く。
旅路は南東北から北関東へと移り、現実が目の前へ近付いて来る。
街に人影は無く、最後の太陽の輝きに照らされるのは人ならざるモノだけだ。
一日で一番美しく、一番妖しい時間が訪れる。


