遠野放浪記 2014.05.06.-09 カール | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

宮守の小さな街に別れを告げ、汽車は再び峠へ挑んで行く。


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街から街へと続く道に、今日も人々が行き交う。

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街外れの田園の中に僅かばかりの家々が点在し、その一番奥に、もうその主を失った廃校舎がもの言わず佇んでいる。やがてその姿も折り重なる森の向こうに消えて行った。

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馬がひと跳ねで越えたという峠を、汽車はゆっくりと越えて行く。岩根橋の集落を過ぎれば、線路は人里と人里の間の寂しい山間に差し掛かる。

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並行する釜石街道に、市境のカントリーサインが見えた。これで遠野市とはお別れ、花巻の街が少しずつ近付いている。

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トンネルを抜け、峠を下ると其処は花巻市の外れ、東和の街。

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東和の中心駅である土沢駅に到着。汽車はこの先、花巻までずっと人が生活を営む土地を走って行く。もうこの旅も終わりに向かっているのだと思うと、寂しくなる。

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東和からおよそ15分程で、花巻駅に到着。釜石線から東北本線に乗り換え、上野まで只管下って行くのみだ。


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跨線橋に上る。北側には盛岡方面の山々が、南側には花巻の街が見える。昼が近付き空は非常に良く晴れ、あの山の向こうの未だ見知らぬ街にも分け隔てなく明るい光を届けている。


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本線の列車が到着するまで30分くらい時間があったのだが、駅の外に出る気力までは無かったので、何をするでもなくホームの上を行ったり来たりして過ごした。

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丁度列車を待つ人も少ない時間帯だった。花巻の春は暑くも無く寒くも無く、気持ちの良い風だけがホームの柱の間を悪戯っぽく吹いていた。

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次の行き先は一ノ関。その先はもう岩手ではない。愛と哀しみの世界。