遠野放浪記 2014.05.05.-06 無慈悲な慈悲 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

ほぼ垂直な崖を恐る恐る下り(上りよりも遥かに怖い)、再び滝を見上げる場所まで戻って来た。


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滝壷には澄み切った水の流れが一瞬留まり、其処からさらに幾筋もの沢になって旅を続けて行く。

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改めて正規の登山道に入り、石上の頂点を目指す旅を始める。最初は道なき道の様相だが、どうやら注意深く探ると、微かに先人たちが歩いた跡を見付けることが出来る。

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岩の裂け目から水が湧き出し、其処此処に名も無き沢を形作っている。六角牛よりも標高は低いが、難易度は遥かに高そうだ。

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少しずつ道がはっきりと見えるようになり、石上の女神に導かれるように一本の道が急峻な山肌を縫って上へ上へと延びて行く。

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あっという間に、馬留めの小屋は森の向こうに消えた。

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足元は非常に心細い。今にも切れてしまいそうな細い糸を辿るように、高いところを目指して行く。

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果てしない年月を経て朽ちてしまった木、そしてその上に新しく生まれる命。山で人知れず繰り返される生命の営みを傍目に……。

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所々、唐突に道が途切れてしまったかのように、鋭い切っ先が現れる。その下には何もない。落ちたら最期の奈落の底だ。

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急カーブと言うのも無慈悲な程の、ナイフの刃の上を歩いているかのような感覚。山には生だけでなく、死もまた間違いなく隣に寄り添っている。