遠野放浪記 2014.05.05.-02 進撃 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

旅人を石上山へと誘う鳥居は、あの日と同じようにひっそりと佇んでいた。あれから6年の歳月が経ち、一層風化が進んでいるように見える。


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一見長閑な風景の中を進むことになるが、そのような雰囲気は長くは続かず、周囲は何時の間にか鬱蒼とした森に囲まれる。

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気が付けば、太陽の光もあまり届かない暗い森に足を踏み入れていた。六角牛山の明るく開放的な登山口とは、あまりにも対照的だ。

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森に入ってすぐ、ぽつんと孤独に佇む巨岩が出迎えてくれる。婆石と銘打たれているが、その由来はわからない。あまりにも唐突に現れたことに、何か意味はある筈なのだが……。

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ゆるやかな上り坂を暫く歩くと、簡素な鳥居が現れた。此処が石上山の登山口だ。

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極めて静かな冒険の始まり。何か空恐ろしいものを感じる。六角牛に対し、石上は謎が多い山である。

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登山口をくぐると、より一層森は深くなり、太陽の光は最早殆ど地面に届かない。

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石上の山容は森の奥深くにあり、未だにその一端すら見えて来ない。

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暫くは緩やかな道が続くが、知らず知らずのうちに高いところへと誘い込まれて行く。

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歩き始めてすぐに、足元には幾筋もの沢が現れる。それらには質素な丸太橋が架けられ、ときにはすぐ足元に水飛沫を感じながら渡って行く。

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沢をひとつ越える毎に、次第に自分の魂が現世から遠ざかって行くのを感じる。今は只前へ進むしかない。