遠野放浪記 2014.05.05.-01 こどもの日 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

人生には、いろいろなことがある。本当にいろいろなことがある。いろいろなことを諦めて、人は大人になって行くのだろうか。それならば俺は、大人になれなくても良い。


そんな一日の夜明けは柔らかだった。太陽は雲の下に隠れ、顔を出してはくれない。

俺は少しだけ身震いすると、寝袋をリュックに仕舞い込んで出立の準備を整える。朝ごはんには、持参したにんにく醤油のおむすびを頬張り、今日一日を乗り切れるように願う。


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石上神社に一宿の礼をし、本殿から降りる。

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境内の下には、小さな石上の集落が広がっている。この街ではいつもと変わらない、慎ましやかな山の暮らしが続いて行くのだろう。

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淡い桜の向こうに延びる道は、遠野三山の一角・石上山へ続いている。

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神社の裏参道から道に下り、女神の歴史をなぞるように、この場所から石上山を目指すのだ。

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神社の先にも、集落はある。しかしその空気は、下界の集落とは明らかに違っている。

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桜が咲く石上神社に別れを告げ、そして人の世界にも別れを告げる。

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沿道から次第に人の気配が消えて行き、空気が冷たく張り詰めるのを感じる。この道をずっと先へ進むと、石上山の山裾を通って附馬牛は東禅寺へと至るのだが、その一番高いところに石上山の入り口がある。

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ところどころで人が住んでいる家を見付けるが、もう集落と呼べるような生活圏ではない。そんな僅かな人家もやがて、全く見えなくなってしまった。

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太陽の光が届かない朝。鬱蒼とした森の間を抜けて行く。

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あの日の記憶が鮮明に甦る。夏の盛りの暑い日だったのに、石上山の周囲だけは空気が凍り付くようだったのを覚えている。

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神社から小一時間上ったところで、ようやく道が平坦になった。この場所が石上山の入り口だ。そしてこの僅かな平地が、石上に挑む旅人にとって最後の安息地なのである。