遠野放浪記 2014.05.04.-22 明日の冒険 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

遠野の街ではいつもと変わらない日常が流れていた。

俺は一先ず疲れを癒すため、馴染みのCocoKanaのドアを叩いた。


1


オリジナルカクテルのすだみと、クレープのデザートで遅いおやつの時間を過ごす。長い独り旅の中で一服の清涼剤である。

2

3


しかし、今日は生憎あまりゆっくりと街に留まっている時間は無い。明日、六角牛に続くもうひとつの冒険に挑むため、夜のうちに綾織の街へ移動するのだ。

4


すっかり闇に沈んだ道を、僅かな明かりを頼りに日影橋へ向かう。釜石街道を横切り、綾織郵便局の角を曲がると、その先は遠野三山の一角、石上山の支配領域だ。

5


このあたりにも小さな集落はあり、所々に街灯の明かりが見えるのが有り難い。郵便局から3km程進むと、石上神社に辿り着く。

6


石上神社の真っ赤な二の鳥居が暗闇に浮かんで見える。

近くの農家から、遠方から帰って来たらしい家族を迎える賑やかな声が聞こえて来るが、鳥居をくぐるとそれら全ては別の世界の出来事に遠ざかって行く。

7


六角牛神社と同じように、石上神社もまた夜の闇の中では全ての時間を止めてしまう。あの夏の日に見た木漏れ日の美しさも、遥か思い出の彼方。全ては死んだように眠りに就いている。

8

9


11


境内の一番奥に、本殿が鎮座している。今日はこの軒下に宿を借りよう。


10

12


暗闇の中で寝袋を広げ、晩ごはんに出汁味の茶飯おむすびを頬張る。街の店でいただく食事と比べると非常に質素だが、山に挑む前の孤独な夜にはこれくらいが丁度良い。

14


明日は石上山に登って下りたら、その後はもう何もしないつもりだ。今回の旅における最後の挑戦を楽しみに、石上の集落と同じようにゆっくりと眠ろう。