遠野放浪記 2014.05.03.-03 足元の春 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

微かに霞む春の空の下、列車は郡山から福島へと渡り歩く。

小さな街のすぐ後ろには、雪を戴いた青い山々が聳え立っている。


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このあたりにまで水が来るのは、もう少し先のことになりそうだ。


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まだ荒涼とした冬の気配を残した、遥か彼方まで視界を遮るものの無い田園地帯に、明るい日差しが満ちている。

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福島駅が近付くと、車窓に映る街が次第に大きなものになって来る。県北には果樹園が多く、風景も少しずつ様変わりして行く。

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荒川を渡り、福島駅に到着する直前の車窓は、この旅の中でも好きな景色のひとつだ。上野を出発してからおよそ5時間、もう間もなく折り返し地点といったところだ。

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宮城との県境が近付くと、再び街は遠くになり、山々はより大きく近く、長い旅路に立ちはだからんとする。

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小さな駅では小さな春に出会える。

ともすれば見逃してしまいそうな程小さな風景だが、旅をしなければ出会えなかった。

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この先はいよいよ県境の難所、厚樫山越えが待っている。