遠野放浪記 2014.04.27.-16 自由 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

新山の交差点から集落までの道は、緩やかなアップダウンが続き険しいところは殆ど無い。

下界のそれに比べれば充分に険しいのかもしれないが、歩いて白望山まで行って来た身としてはこの程度の道程は児戯に等しい。


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既に傾きかけている太陽に向かって行く。琴畑川の表情も、やがて夜を迎える顔に変わりつつある。

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雪はもう全くと言って良い程姿が見えない。眩しい西日が木々の枝の合間を縫い、林道を透明な炎で燃やしている。

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朝に通り過ぎた琴畑不動堂を再び拝み、無事にこの場所まで戻って来られたことに感謝する。

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不動堂が、人里とそうでない場所の最後の境界であると思う。まだこの先林道は続くものの、不動堂を過ぎればもう琴畑集落の圏内に入りつつある。

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白望山を出てから四時間近くが経ち、ようやく視界は開けた。太陽の光を浴びて輝く、集落の外れの小屋が姿を見せた。

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太陽はもう山の向こうに沈む準備をしているところだ。林道を完全に抜け、集落で一番大きい屋敷の瓦屋根が見えて来たところでようやく安心する。

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遠野の最奥で過ごす長い一日が終わろうとしている。山の稜線に透き通る白が、ふと目に入った。