遠野放浪記 2014.04.27.-04 別れ道 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

道は半ば、ようやく白望山と新山との分かれ道に辿り着いた。


1


この先は琴畑川と別れ、さらに深い山へと分け入って行くことになる。

2


少しばかり森から春の気配が薄れた気がする……。

3


するとすぐに、林道は一面の雪に覆われてしまった。

4


何とかパティを連れて行こうと踏ん張ってみたが、道の中盤でこの有り様では、白望山に近付けばさらに雪は深くなるだろう。これ以上パティと行動を共にするのは厳しいが、かといって帰り道の貴重な足を失うのは余りにも痛すぎる……。

5


しかしながら、今回の旅の最大の目的は、あくまでマヨヒガを発見することだ。どんなに長い道程であっても、歩けばいつかは白望山に到着するし、帰り道もまた歩けばいつかは此処に戻って来られる。

俺はこの場所にパティを残し、独りで白望山まで徒歩で向かうことにした。

6


雪は非常に厚く積もっている場所もあれば、全く積もっていない場所もある。同じ林道でどうしてこれ程までに差が生まれるのかはよくわからない。自然は不思議だ。

7


すると草叢から、一匹のタヌキが飛び出して来るや否や、俺に驚いてトテトテと小走りで山の方へ走って行ってしまった。

8


あまりこうした生きものとの出会いに縁が無かっただけに、少しの間とはいえ可愛らしいお尻に付いて歩く機会に恵まれたのが嬉しい。

9


タヌキが何処かへ行ってしまってからは、また独りだ。周囲の雪は段々深くなって来た気がする。

10


以前あった沢はだいぶか細くなり、雪の間を申し訳なさそうに流れている。

11


雪に堰き止められて、不思議な色の池が出来上がっていた。道中、他にこのような色をしている水溜まりは無く、どうして一ヶ所だけこんな色をしていたのか……。

12


やはり自然は本当に不思議だ。ほんの僅かな時間が経つだけで、こんなにも姿を変えてしまう。

13


周囲の森から生きものの声が消えた気がする。半年前にあんなにも賑やかにしていた鳥や虫たちは、何処へ行ってしまったのだろうか。

14


先程のタヌキはこれからも元気に生きて行くのだろうか。もしかしたら彼等だけが、マヨヒガの在り処を知っているのかもしれない。

15


人間にとって先はまだ長いようである。