最近、釜石線の駅標識がポップなイラストに架け替えられたのは紹介済みだが、帰り道では各駅の駅標識がどのようなものに変わっているか、まだ拙著で紹介し切れていないものを中心にチェックして行きたい。
まずは遠野駅の隣、綾織駅から。鶴の恩返しよろしく、家の中で秘密の機織りをしているシーンがあしらわれている。
市街地から離れた広大な田園地帯は、季節によっては生きものの気配も途絶えて寂しく、ときにもの悲しい伝説を生み出す土壌になる。
さらにその隣の岩手二日町駅は、土地柄から大きな農家のイラスト。綾織駅とは違い、何処か長閑な雰囲気が感じられる。
このあたりから、旧宮守村との境界付近に差し掛かる。現在は宮守と遠野は険しい峠道によって隔てられているが、元々宮守村は遠野盆地のかなりの部分をも占めていたのだ。
少しずつ山が近付き、昔ながらの小さな集落が残る荒谷前駅に到着。今は失われてしまったが昔はあった立派な水車のイラストが描かれているだけでなく、これから汽車が乗り越えて行かなければならない深い山の様子も暗示されている。
鱒沢駅を過ぎると、いよいよ遠野盆地と宮守を隔てる寂しい峠に差し掛かる。街は姿を消し、人ならざるモノの世界が其処には横たわっていた。