遠野放浪記 2014.02.16.-10 平和への道 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

岩根橋から雪道を歩くこと一時間、ようやくエイスリンちゃんの聖地が見えて来た。


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様子はすっかり変わってしまったが、この道が俺を暖かい場所へ導いてくれる一本道である。

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山の向こうがようやく明るくなり始め、空模様は次第に安定へ向かおうとしている。

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俺の前に、誰かの足跡が先を行っていた。路上の雪も少しずつ姿を隠しつつある。

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めがね橋へ向かわず、駅入り口の坂を上って市街地に入る。

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吹雪の夜が明け、少しずつではあるが街はいつもの表情を取り戻しつつあるように感じた。

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昨日は人の姿が消えてしまった宮守駅にも、今日は汽車に乗る地元民が戻って来ている。

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まだ汽車が来るまでに時間があるが、ホームに上って待つことにする。

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二日振りの汽車を迎えるため、雪に埋もれたホームは地元民の手によって綺麗に整備されていた。

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花巻方面の雲はようやく晴れ、宮守の街に静かな、透明の光が降り注いだ。

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後何度か冬の嵐が過ぎ去れば、新しい命が芽吹き、宮守に多くの人が訪れるようになるだろう。

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やがてすっかり空の明るさが戻って来る頃になり、快速はまゆりは時刻表通りに宮守駅に到着した。


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今日の下りの汽車は遠野止まりであり、しかも快速しか走らないため、遠野と鱒沢以外に住む人にとっては未だ平穏な日常は戻って来ていない。こうして旅を続けられるだけでも、俺は充分に恵まれている。