帰りの快速はまゆりに乗るため、俺は釜石街道を歩いて再び宮守駅へ向かう。
すると、丁度俺が乗る一本前のはまゆりが、吹雪の中から姿を現して俺とすれ違った。
雪に埋もれた岩根橋駅に、今日はもう人が訪れることも無いだろう。
小さな岩根橋の街に別れを告げ、宮守に向かう寂しい峠道を歩いて行く。
先程下から見上げた岩根橋を、今度は歩いて渡る。次に会える日を楽しみにして。
やがて峠道はピークを越え、なだらかな下りに転じた。もう少し下れば、懐かしい宮守の街が見えて来る。
この峠越えは釜石線の車窓の中でも特に好きな風景で、険しい峠を抜けて宮守に到着すると、心が暖かい空気に包まれるのを感じるのだ。
初めて宮守を訪れたのも、汽車に乗ってではなく、この峠道を自力で越えてのことだった。
今まで見たことも無い恐ろしい天候に見舞われ、自分の無力さに絶望を感じた今回の旅。
それでも宮守は、いつだって俺の心を満たしてくれる。


