道の先には一本の橋が架かっていた。
橋を渡り猿ヶ石川の対岸に入ると、その先は再び上り坂。駅から離れ、全く別の世界が広がっている。
駅に対して、今はどの位の位置にいるのだろうか。
猿ヶ石川の水面はすぐ目の前にまで迫り、遥か遠くには岩根橋の姿が見える。
橋の袂からは、猿ヶ石川に沿って延びるさらに細い道があった。
道の脇には「管老庵」と書かれた質素な看板が掛かっている。こんなところに、宿か何かがあるのだろうか。
道はやがて一軒の家の前に差し掛かるが、今は人の気配は無くひっそりとしている。
山がもう目の前にまで迫り、猿ヶ石川の険しさを身に染みて感じる。対岸の崖の上には小さな集落があるのが見え、あそこもきっと俺が今まで知ることがなかった街のひとつなのだろうと思う。
人気が無い家の先へさらに進むと、猿ヶ石川の河原に入れるようだ。
このまま猿ヶ石川を下れば、今日の目的地である岩根橋に辿り着く筈。雪が深いが、取り敢えず歩いてみることにする。