遠野放浪記 2014.01.11.-13 長い冬の夜 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

宮守川に架かるめがね橋を上から見ることが出来るスポットは、踏切を渡ってすぐの場所にある。

やはり今日も誰もいなかった。この光景を、誰にも邪魔されずに独占できるのは幸せの極みである。


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まだ淡い残光が空に広がり、完全に暗くなってしまう前のめがね橋は、今まさに現実から幻想へと移り変わろうとしていた。

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澄んだ冬の空気が少しずつ微睡み行く中で、めがね橋の光は次第に大きくなり、宮守の街の内側と外側を等しく照らしている。

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これからこの場所で、橋を渡る汽車の様子を写真に収めたいのだが、次の汽車が通るまでに小一時間あったりする。俺は一旦道の駅に立ち寄り、おやつを食べたりまったりしたりして過ごし、完全に暗くなってからまた戻って来ようと考えた。

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いろいろやってまた戻って来るうちに、空は完全に暗くなっていた。いよいよ宮守に夜が訪れた。

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空に雲が多く、星空が見えないのが少し残念だ。この時期は空気が綺麗で、岩手は街中でも素晴らしい星空が見えるのだが……。

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さて、そろそろこの橋を、花巻に向かう汽車が渡る筈なのだが……まだ踏切の音は聞こえて来ない。

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時計と橋を見比べながらそわそわしていると、待ち望んだ踏切の音、そして汽車の警笛が風に乗って聞こえて来た。

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そして森の向こうから、勇ましい汽笛を響かせながら、2両編成の汽車が姿を現した!

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汽車はあっという間に、俺の見ている前でひと筋の光になり、宮守駅に向けて走り去って行った。

そして入れ違いに、宮守駅を出発した汽車がスピードを上げて俺の視界に突入し、雪煙だけを残して橋を渡り、海を目指して消えて行った。

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舞い上がった雪が静かに舞い落ちた後は、また静寂だけが残る。

振り返ると、宮守駅を出発した汽車が、小さな光を残して峠に挑んで行く姿が見えた。


汽車は今日も人々の夢、希望、願いを乗せて、現実と幻想の狭間にある橋を渡る。この姿だけは、この先何があっても壊さないで欲しい、俺はそれだけをこの景色に望んでいる。