これから最終の汽車で宮守を出発する前に、晩ごはんを駅前通りの鮨いしはらでいただいて行くことにする。
石原さんは半年前に一度だけ来た俺を、ちゃんと覚えていてくれた。今日び外から来て宮守で晩ごはんを食べて行く観光客も少ないようで、俺のような存在はある意味貴重だと言ってくれた。
暖かいお吸いものに続き、今回もお任せで寿司を頼んだところ、前回にも増して豪華な11貫と巻きものを用意してくれた!
アナゴにウナギ、生海老、蒸しウニとカニの軍艦などが盛り込まれ、これで何と¥1,500だった。別の場所で同じ寿司をいただこうと思ったら、倍はかかると思われるレベルだ。
美味しい寿司をいただきながら、石原さん夫婦と宮守や遠野の未来について話し合った。宮守がどうなってしまうのか、宮守ファンの俺としても非常に心配であるが、俺は今後何があっても宮守に通い続けるし、石原さんにも体力が続く限り頑張って寿司を握っていただきたい。
さて、今日は汽車の時間があるので、残念ながら21時過ぎには店を出なければならない。
石原さんに挨拶し、すっかり冷え込んだ宮守駅前通りに出た。人気は無くなり、非常に寂しい……。
寂しく明かりが灯る宮守駅。この姿も、後何回見られるのだろう……。
銀河鉄道のホームに人影は無かった。後数分で、俺も宮守駅を離れなければならない。
寂しさに浸る間もなく、汽車は時刻表通りに宮守駅に到着した。
先程まで眺めていためがね橋を渡り、次の目的地である鱒沢駅に俺を降ろして去って行った。
鱒沢駅の看板も、当然新しくなっていた。
駅の愛称は「天の川」……駅前を釜石街道を挟んで流れている猿ヶ石川に由来している。今は闇に沈んでその姿は見えないが、明日はその川を渡って遠野遺産を巡る予定だ。
最後の汽車が行ってしまい、鱒沢駅にはもう誰もやって来ない。この季節には、駅寝をしようという人もいるまい。駅のすぐ前を車が行き交っているというのに、ホームの上はとても静かだ。
今日は変わり行く宮守と宮守駅の残酷な現実を知ることになってしまったが、その中にも変わらない風景があり、変わらない人々がいた。彼らがいてくれる限り、宮守は大丈夫だろう。俺もその一助となるために、旅をする元気がある限り、宮守に足を運び続けたい。
さて、それでは明日から始まる2014年遠野の旅でいったい何が起こるのか、楽しみにして寝よう。