宇都宮線が東京に向かって走る頃には、車外はもう真っ暗になっていた。
しかし首都圏の街はこの年の瀬にも、煌々と灯る明かりで旅人たちを見送っていた。
特にトラブルらしいトラブルも無く、19時頃には上野駅に到着。
相変わらず街は人で溢れているが、心なしか皆、歩みが忙しないような気がする。
本郷通りまでは車の通りも多く、季節問わずな感じがするが、菊坂まで来るともう人の気配は無い。
普段ならば19時過ぎには、まだ近所の人の賑やかな声が聞こえて来るのだが。
じっと年が過ぎるのを待っているのか、遠く離れた家族の元に帰って行ったのか……。
いつもならば此処でゆっくりしたいところだが、今回は不要な荷物を置いた後、茅ヶ崎の実家まで帰らなければならない。身支度もそこそこに、再び家を飛び出した俺は、御茶ノ水駅に向けて歩き始めた。
パティには、今回は本郷で待っていて貰うことにする。
今年も一緒にいろいろなところへ旅をし、本当によく頑張ってくれた。パティとの旅路は、目を閉じればすぐに詳細が頭に浮かんで来るくらい、常に思い出に溢れていた。
次の旅まで束の間、ゆっくりと休むがいい。


