遠野放浪記 2013.12.31.-07 最後の夜が来る | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

寒々とした灰色の空の下、列車は北関東を目指して下って行く。

小さな街に人の気配は無く、今年最後の夜が訪れるのをじっと待っているように見える。


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15時を回ると、太陽は急速に傾いて行く。

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福島の大地に、もうすぐ夜の帳が降りて来る……。

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冬の雲の隙間から、淡い光が放射状に漏れ出て、美しいコントラストを青いキャンバスに描き出している。この光が地上に降り注ぐ様を、人は「天使の梯子」と表現するそうだ。

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やがて太陽は、山の稜線に限りなく近付き、その姿を少しずつ隠して行った。

淡い光は一瞬眩さを増し、地上は薄紅色に染められた。

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しかしやがて山深い区間に入ると、その姿は細く小さくなり、消えて行った。

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山間部は平地に比べて気候が厳しい。小さな池などは完全に凍り付いてしまい、全てのものが動きを止める時間が訪れている。

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黒磯が目の前に近付き、一瞬だけ太陽が山の影から顔を出した。

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真っ赤な光が空を染め、刹那の輝きの後、光は今度こそ完全に消え去り、そして街に夜が訪れる。

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空が暗くなる少し前に、黒磯駅に辿り着いた。

この後は加速度的に暗くなり、ものの数分であたりは闇に包まれるだろう。

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此処まで来れば、もう東京は近い。列車のドアを開く度、現実が近付いていることを否応なしに思い知らされる。

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旅の終わりが近付き、心なしか他の乗客たちもその表情に寂しさを帯びているように見える。