遠野放浪記 2013.12.28.-09 遅い目覚め | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

小牛田駅で少し余裕が出来たので、出発までの間ホームを歩いてみる。

雪は相変わらず強かったが、厚い雲を突き抜けて太陽の日差しが街まで届いている。冷たくも美しい、北東北の冬。


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小牛田を出ると、また家の数は少なくなり、行く手には何もない大雪原が待ち受けている。

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農業を営む家が疎らにあり、車窓に現れては消えて行く。

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今は農閑期、人々は家の中でじっと息を潜め、冬が去るのを待っているのだろう。

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吹雪はますます強くなり、数メートル先の様子も満足に見通すことが出来ない。

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辛うじて、電柱や鉄塔が現れることで、その下に道があることがわかる。

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このような状況では、少し外を歩くだけですぐに身体が縮こまってしまうに違いない。今の大地は、人ならざるモノが支配する季節である。

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誰の声も聞こえず、誰の足跡も残らない。厳しい冬の大地を走り、列車は岩手県に入る。

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実感は例によって清水原駅に到着するあたりでじわじわと湧いて来るのだろうが、ともかく懐かしい冬の岩手に戻って来た。いろいろな出会いに恵まれたのも、傷心の中久し振りに遠野を訪れたのも、冬だった。最も厳しい季節だからこそ、冬の岩手は暖かい。