空模様は目まぐるしく変化しながらも、行く末は段々と真冬のそれに近付いている。
塩釜や愛宕などの大きな街を過ぎると、見渡す限りの雪原が広がる県北に差し掛かる。
視界に映るもの全ては“白”で、他に何もない。雪に埋もれた一本の道に、今は歩く人もいない。
こんな景色の中を、北東北の田舎に帰る人々を乗せた列車が走り抜けて行く。
途中、幾つかの街に立ち寄り、列車は少しずつ人々を降ろして行く。先程まで車窓から眺めていた風景の中に、あの人たちは帰って行くのだ。
街と街の間では、また何もない雪原が続く。今日は遠くの山も見えない。
俺も何だか自分が、この時間が止まったような風景と一体になって溶けてしまうような感覚に陥り、何を考えるでもなくずっと車窓に降る雪を眺めていた。
全てが雪と氷に埋もれた風景の中、川だけは凍らずに今も時間を刻んでいた。
此処まで来ると、もう雪は降り止むことも無く、ゆっくりと宮城の田園を覆って行く。辛うじて見えている細い道も小さな家も、直に白一色に埋まるだろう。
やがて次の乗換駅である小牛田が近付き、車外に家の数が増えて来た。
吹雪の中でも、人々は変わらず生きている。俺が知らない生活の場所を、今はただ通り過ぎて行く。
