遠野放浪記 2013.12.28.-10 母なる大地 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

岩手に入ってからも、天候は変わらない。日も傾き始め、濃い灰色に覆われた空の下を、列車は北を目指して走り続ける。


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動くものは何も見えない、真っ白な大地。

逆さ吊りにされて干された稲藁が、雪の中に置きっ放しになっている……。

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辛うじて大きな道では、車が走っているのが見える。心なしか、見えない不安から逃れようと家路を急いでいるようにも見える。

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小さな街は幾つかあれど、人の気配は殆ど感じられない。

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時間が経つと共に天候はどんどん悪化して行き、岩手も強い吹雪に襲われた。

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山も街も人も、吹雪の前には何も見えない。

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誰もおらず、足跡さえ付いていない小さな駅を、列車は置き去りにして行く。

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岩手県南には、平泉や北上といった大きい街が幾つかあるが、賑わっているのは駅の周りくらいのもので、街と街の間はやはり静まり返った灰色の街が見えるだけだ。

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数ヶ月前から全く変わってしまった岩手の大地。夏に見た、生命の輝きに満ちた風景とこれが同じ土地のものだとは、とても信じられない。

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旅は続き、列車は間もなく花巻に到着。

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もうすぐ、また遠野に帰ることが出来る。

俺の全てを受け入れてくれるあの場所に。