遠野放浪記 2013.09.23.-04 山も川も人も | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

高清水山の展望台からは、遠野盆地のほぼ全てが見下ろせる。正面には猿ヶ石川が横たわり、市街地から青笹に向けてバイパスが貫いている。初めて此処に来た夏、暗闇が包む遠野盆地に車の明かりが輝いているのを眺めていたっけ……。


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バイパスの向かって右側に見える光の筋が、早瀬川。その向こう側に、駅前の繁華街が見えている。

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一方で、土淵方面には殆ど家が無く、山間の平地には有らん限りの黄金の田園が広がっている。

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遠野という土地の姿が凝縮された風景が眼下に広がっているわけだ。

駅前、早瀬、青笹、土淵……遠野に散らばる街は、その場所その場所で全く違う空気が流れている。その理由が、此処から遠野を見下ろせば何となく理解できる気がした。

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遠野は広い。此処から見える範囲だけでも、本当に広い。この目に映る山も川も人も、何かひとつ欠けるだけで遠野という場所は成り立たない。

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まだ時間は8時過ぎ。太陽がまだ低い空にいるので、ちょっと逆光気味なのが唯一残念。でも昼まで待っていたら、今日中に帰れなくなる……。

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まあ時間が許す限り、山深い黄金郷の景色を楽しもう。

もう数日もすれば、稲刈りが終わって冬支度が始まる。今日あたりがこの景色に出会える最後のチャンスだろう。

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あの山を越えた先には海がある。目に見えるものが全てではなく、世界は無限に広がっている。

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市街地のすぐ奥には、小高い山が聳えている。鍋倉山を包み込むように立つ物見山だ。

標高は917メートルあり、この高清水よりも高い。物見山というくらいだから、あそこから見える風景もきっと格別なのだろう。いつか登ってみたい山のひとつだ。

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土淵方面の最奥には、あの白望山が鎮座している。高清水から見える姿は、とても小さい。

あんなに遠くまでよく行って帰って来たものだ。しかも半日で……。

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高清水のような人里の山から、白望山みたいな完全に俗世とは切り離された山まで、どれひとつとして同じ山は無いから、次はどんな山に出会えるのか……と考えながら歩くのが楽しい。

いつか遠野の全ての地面を踏破する、そんな途方もないのが俺の夢だ。