遠野放浪記 2013.09.23.-03 太陽が近い | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

高清水の最後の森を抜け、ようやく広い牧場地帯に差し掛かった。


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其処は太陽の光も、強い風も遮るものは無い。山のもうひとつの顔が垣間見える。

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目的地の展望台までは、まだ歩かなければならない。山頂が近い牧場地帯も、アップダウンが絶え間なく続く。

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この場所から見る太陽はまだ低く、木々の影は長く伸びて道にも掛かっている。

人が足を踏み入れない場所にも、等しく夜が来て、そして朝になる。今、俺がこの場所にいることに気が付いている人はどれ位いるだろうか。

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高清水の朝、何もない牧場をたった独りで歩く。

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やがて、綾織を見下ろせるポイントに差し掛かった。

振り返ると、先程まで俺がいた場所が小さな箱庭のように見えた。猿ヶ石川と釜石線が東西に走る綾織の田園地帯は、今まさに一年で一番の輝きを湛えている。

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綾織ポイントから少しだけ歩けば、いよいよ展望台に到着する。

これだけ天気が良い日だと、車で上って来て景色を見て行く人が多いのだが、今朝はどうやら俺が一番乗りみたいだ。

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何だかんだで、屋根がある場所は安心する。パティと一緒に小屋に入り、まずは一服。

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朝日に包まれた遠野盆地は、もう目の前に見えている。