遠野放浪記 2013.09.23.-02 牙を剥く前の山 | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

9月下旬の高清水は、既にひんやりとした、微かに冬の匂いを感じる空気に包まれている。


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まだ朝早い登山道は、暗い森の陰に包まれ、人里よりも心細い。

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それでも、急勾配の道を歩くうちに身体は火照って来るので、この冷たい空気が気持ち良い。

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冬に此処を歩いたときには、全てが白と灰色に覆われた、今とは全く違う過酷な世界だった。後少し経てば、再びあの世界がこの場所に訪れる。その前の、短い稔りの季節の山。

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空が近付くに連れて、少しずつ太陽の恩恵が感じられるようになって来る。

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中腹から振り返れば、この景色。綾織の小さな街はもう目覚めている。

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空の青は少しずつ濃くなって、足元には木漏れ日が揺らめく。まだ山は、人間に対してその牙を剥いていない。

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朝の日差しはまだ、森が深い場所に差し掛かると隠されてしまうような心細いものだが、歩みを進める度に太陽に近付いていることを信じて歩き続ける。

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少しずつ、周囲の森の木が低くなって来た。日差しも明るくなって来たし、そろそろ森を抜けて牧場に入る頃合いかな?

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カーブばかりの登山道の中で、印象的な最後の直線。かなり急な坂だが、そろそろ目的地が近いことを感じ、足取りも軽い。

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時間は午前8時前。遠野盆地はもう目を覚ましているだろう。