長松寺の門の下で一泊した俺は、早めに出発しようと思っていたのだが、住職の方が早起きだったため、彼に起こされることに。まだ6時前だぞ!
寺の人の朝は早い。幸い住職は優しい方で、この先の旅路を応援していただいた。
ようやく空が澄んで来た遠野路を走る。今朝の目的地は、高清水展望台だ。
高清水山と石上山に東西を挟まれた綾織町みさ崎の朝は、山影に隠れて太陽の光はか細い。
遠野まつりが終わった遠野の田園では、既に稲刈りが始まっている。
高いところに登れば、太陽に会えるかもしれない。山へ向かい少しずつ勾配が大きくなる綾織の道を、冷たい空気にすっかり目が覚めた二本の足が歩いて行く。
真冬の白い遠野、春の青い遠野、そして夏の深緑の遠野と、季節が巡る度に高清水に挑んで来たが、この秋の黄金の遠野を目に焼き付けたとき、俺と高清水の関係にも大きな区切りが付くだろう。
少しずつ高いところまで上って来た。振り返ると、綾織の平地には既に太陽の光が届き、日差しを浴びて輝く黄金の田園が見えている。もう暫くして、太陽が空高くに昇って来ると、今は影に覆われている山間の小さな街にも、分け隔てなく日差しが降り注ぐだろう。
おっと、本格的な山道に入るあたりで付近の住人に遭遇。
このあたりに人里最後の人家があるので、其処かその近くの住人だろう。
やがて、見慣れた山道への入り口に差し掛かった。この風景を境に、道に立ち込める空気は、人里から山のそれに変わる。
展望台まではおよそ2時間。気合を入れて出発だ。