遠野放浪記 2013.09.22.-16 闇の底へ | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

スナックを出たときには、もう日付も変わる直前だった。まつりの後の駅前には、人っ子ひとりいない。

C氏とM氏はともに早瀬方面へ帰って行ったため、俺はお姉さまとふたりで鍋倉方面へ(彼女の実家は民話通り沿いにあるのだ)。特に中身も無い雑談をしながら歩いたが、そんな時間が心地良かった。


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お姉さまを見送った後は、明日に向けて俺も寝床を探す。

いつもならば、最終日は遠野を出て帰るだけなのだが、明日はその前にとある場所に寄って行きたく、夜のうちに目的地の近くまで行っておきたい。

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街を出た俺は、愛宕山の麓を回って日影を目指す。

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慣れた道だから、迷ったり事故に遭ったりということも無いが、夜の遠野は本当に暗い。街を少し離れただけで、あたりは漆黒の闇に支配される。

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遠くに見えているのは、綾織あたりの明かりだろうか、それとも眠らずに遠野バイパスを走る車だろうか。瞬いては消える暖かい地上の星を頼りに歩く。


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悠に隣の綾織駅位まで歩き、酔いもすっかり醒めてしまった。


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綾織から石上山へ向かう道の入り口に長松寺があり、有り難いことに夜も門が開いていたので、その屋根の下で一夜を明かさせていただくことにする。

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もうこの時間なので、住職たちも寝静まっているようだ。

俺も静かな夜を掻き乱さないように、そっと荷解きして寝袋に入った。

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先週・今週と連続で秋の遠野に遊び、特に天候にも恵まれた今回は、白望山にまつりに友人たちとの触れ合いと、過去の旅と比べても非常に稔り多い時間を過ごすことが出来た。

しかし、この時期の遠野に来てしかも太陽も顔を出すとあれば、あそこから遠野を見ずには帰れない。

寝起きでしかも帰りの汽車の時間があるため、かなりの強行軍を余儀なくされるが、折角の独り旅なのだから、やりたいことは全てやってから帰ろう。