遠野放浪記 2013.09.14.-11 常闇の中の扉 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

早瀬の十字路を北に向かい、八幡宮も通り過ぎると、家の明かりも疎らで、夜の闇が支配する土淵に突入する。

この土淵には最近、復興支援事業の一環であるかっぱロードなるバイパスが通った。今(2015年現在)は和野までの全線が開通しているが、当時はまず高室あたりまでの開通だった。


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高室からは旧道に入り、古い街並みの中を北へ進む。

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初めてこの道を通ったときも、ひたすら長い道程だったことを覚えている。

やがて、土淵第二小学校跡が見えて来た。

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バイパスよりも旧道の方が、当然ながら家は多い。しかしその多くは明かりを落とし、ひっそりと長い夜が過ぎるのを待っているようだ。

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道はいつしか琴畑川と合流。そして土淵地区の分水嶺、一ノ渡の交差点へ……。

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俺はこの交差点を右に曲がり、さらに遠野の深い闇へと踏み込んで行く。

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旧道にも疎らにながら存在していた街灯も、此処から先はさらにその数を減らしてしまう。

行く手には深い山が聳えるのみ。遠野の中でも、一番夜が暗い場所かも知れない。

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一ノ渡を後にすると、此処までの道とは比べものにならないくらい、長く孤独な山道が待っている。そしてその先に、遠野最後の小さな集落がある。

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そう、この道が通じる先はひとつしかない。

今晩の目的地は琴畑である。