一の滝より先は、また川から離れて静かな道が続く。
行く手には結構な霧がかかっているように見えるが、大丈夫だろうか……。
心配しながら歩いていると、急に視界が開けて、平らになっている場所に出た。
昔の農地か、牧草地の名残だろうか。
何もないといえば何もないが、何だか不思議な感覚がある場所だった。
何かぞわぞわしながら不思議な場所を通り過ぎると、今度は俄かに雲が切れ、強い日差しが降り注いで来た!
山の天気は変わり易いというが、変わり過ぎだ。
ただ勿論、晴れてくれるのならばこれ以上有り難いことは無い。折角高原に上っても、雨ではあまり景色が楽しめないだろうから。
周囲の森も少しずつ背が低くなって来ている。長かった道程も、佳境に差し掛かりつつあるのだろうか。
このただ広い草むらには、いったいどんな物語があったのだろうか。今も俺が知らないだけで、小さな花の下では壮大な物語が繰り広げられているのだろうか。
俺がどんなにそれを知りたがっても花は応えてくれず、ただ風に身を任せて揺れているのみである。
やがて、どれだけ歩いて来ただろうか……道端に、遠野の名所によく置かれている案内板が立っているのが見えた。
ようやく寺沢高原の頂上が目の前に近付いて来ているようだ!
実際に自分の脚でその場所に立つまで油断は出来ないが、長かった道もようやく終わりを迎えそうだ。