遠野放浪記 2013.07.14.-09 知らなかった世界 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

その場所には、寺沢高原の頂上付近を案内する看板も一緒に立っていた。

ということは、本当に此処が高原地帯の入り口だと思って良さそうだ。


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早速先へ進もう……と思ったのだが、その瞬間俄かに強い雨が降り出し、あっという間に俺を濡れ鼠にした。

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小雨程度ならば気にしないのだが、これは明らかに傘が必要なレベル。折り畳みを持って来て良かった。

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最後の森林地帯を抜けると、其処には広い平原が広がっていた。視界を遮るものは無く、どの程度の距離があるのか見当も付かないくらい遠くの山々まで、頭を左から右に動かすだけで余すところなく目に入って来る。

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空に重く垂れ込める雲まで、この緞帳に山々が映えている姿が美しくさえ見える。

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見晴らしが良いとかいうレベルの話ではない。見えるものはただ深い山、山ばかり。

此処がどういう場所であるか、ひと目見るだけで後は言葉など要らない。

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俺は灰色の空が近い場所で、高原に敷かれた道を歩く。

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寺沢高原はとにかく広い。まだ此処は高原のほんの入り口に過ぎない。

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暫くしてようやく、東屋のようなものが見えて来た。

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牧草地帯を大きく迂回し、其処へ近付いてみる。

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いつの時代の人が用意したのかもわからない、無骨な門に出迎えられる。

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歓迎の暖かい言葉も、抱擁もない。ただ悪戯っぽく、夏にしては冷たい風が吹き抜けるのみだ。

しかしこの場所では、寧ろそれが心地良い。

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東屋は思った以上に巨大で、雨風を凌ぐには充分。

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一夜を明かしたいときにも、心強そうだ。

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どうせ気儘な旅だ、雨が小降りになるまで足を止めて休もう。