遠野放浪記 2013.05.26.-06 Feel all right | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

俺が今日の晩ごはんをアーグラーに決めていたのは、遠野に出発する前日に何気なく自宅近辺のインド料理屋を調べていて「この店にはぐるなび限定の割り引きコースがあるらしい……」ということを知ったからだった。

日本で一番美味いカレーが食べられる店 は実は俺の家からすぐの場所にあったのだが、そのことに気付くか気付かないか、俺のカレー屋巡り時代末期の出来事である。


店に入ると、何人かのインド人シェフが厨房で料理をしているのが見えたが、出迎えてくれたのは日本人だった。俺は早速印刷したぐるなびのクーポンを手渡すと、彼は少々渋い顔……実はこのコース、2名以上でしかも前日迄に予約しないと食べられないとのことだった。

俺は諦めて別のメニューを発注しようと考えたが、しかし当時のぐるなびにはその注意事項が記載されていなかったため、店側の落ち度ということで特別にコースを食べさせていただけることになった!


前菜はひよこ豆入りシーザーサラダマサラカシューナッツ。とても酒が欲しくなるような顔触れ。

シーザーサラダには、細かく刻んだカッテージチーズが入っているのが良い感じだ。


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続いてグリルの盛り合わせ。フィッシュティッカ、シークカバブに、タンドリー料理の中では一二を争うくらい好きなマライティッカだ。

付け合わせのケチャップ、ミントチャツネ、マンゴーチャツネをかければ味に変化が付き、濃い味なのに飽きずにいただけるのが嬉しい。

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メインは勿論カレー。カテゴリ毎に分けられたみっつのグループの中からそれぞれ一種類ずつカレーが選べるのだが、全てのグループに肉系のカレーが入っていたりと、いったいどんなカテゴリでグループ分けされているのかが謎だw

今回は海老のバターマサラ、カシミリ、ナブラタンのみっつを選択。全体的にマイルドなカレーばかりが揃ったが、当時の俺は未だ辛いものに耐性が無かったのでこれで良い。最近は辛さばかりをウリにして、肝心の味が伴わない残念な店も多いが(何処とは言わない)、やはりしっかり味わえてこそのカレーだ。

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なおこのコースでは、ライスの他にナンチャパティが食べ放題。本来は複数人でシェアするのが正しいのだが、少しずついろいろな種類を食べたい場合も、小さいサイズで作ってくれたりするので頼んでみると良い。


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チャパティはあまり日本人には馴染みが無いが、北インドでは家庭料理として御馴染みで、食べてみると結構クセになる。

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いろいろと食べまくって、これで英世2枚から御釣りが来るのはかなり得した気分。ぐるなびに記載を忘れた(現在はちゃんと書かれている)からと独りで店に来た俺にもコースを出してくれるという対応も嬉しかった。

旅の最後に素敵な夕食に巡り会うことが出来、大変満足した状態で家路に就いた。

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この時間になるとアメ横も大半の店が閉まり、相変わらず人通りは絶えないものの幾分か静かになる。

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人のあるなしでこうも街の表情が変わるのか……。

むしろ東京という街は、夜にこそ人の手を離れ、本来の姿を取り戻すのかも知れない。

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田舎の街は人と共に在り、人と共に生き、夜に眠る。それは古き佳き日本の在るべき姿だと思う。

東京は人と共に在るようで決して溶け合わず、やがて驕る人の手を離れて逸走を始める。結局のところ東京は七十年前と同じ場所を未だに迷い続けているように見え、それがやがて暴走へと変わって行きそうな暗い予感がある。

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上野駅から数分で隣の御徒町駅に辿り着き、アメ横は終わる。此処からはいつもの帰り道だ。

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天神様の切通坂から本郷通りへ抜け、菊坂を下って自宅に到着。時間はもうだいぶ遅いが、この旅の余韻を失いたくなくて、きっと俺は夜更かしをするのだろう。


早いものでもう春も終わりである。やがて空を黒い雲が覆い、大粒の涙を流した後は、笑顔で迎える夏が来る。そうやって季節は廻って行くのである。

次に遠野を訪れるのは7月の連休あたりだろうか。それまでの“日常”を楽しんで生きて行こう、この東京で。