遠野放浪記 2013.05.25.-09 ふたり旅 | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

綾織から高清水展望台までは、およそ6.4kmもある。

マヤノトップガンならば6分28秒8くらいで頂上まで辿り着ける計算になるが、俺は人間なのでゆっくり歩いて登ることにする。


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暫くは、綾織の小さな集落の中を上ったり下ったりの道が続く。

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しかしそんな人里の道もすぐに終わり、気付けば街は眼下に小さくなって来る。

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道は高清水の森の中へ。あの真っ白な季節から4ヶ月が経ち、今は深い緑に吸い込まれて行く。

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綾織の街はもうあんなに小さくなった……。

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此処から長く厳しい山道が始まる。

1月にはたったひとりの挑戦だったが、今はパティと一緒なのでかなり心強い。

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綺麗な樹氷に彩られていた道が、今は全く違う表情で俺を待ち構えている。

全てが白に閉ざされていた世界には、今見るからに生命が満ち溢れている。

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晩春の遠野で、ひとりと一台の挑戦が始まった。